2017 年 66 巻 3 号 p. 562-564
若年者の両側大腿骨頚部疲労骨折は稀である.陸上部の高校生に発症した両側大腿骨頸部疲労骨折の一例を経験したので報告する.症例は陸上部の16歳男性で,駅伝を走った後から左股関節痛が出現し,1ヶ月後当科を受診した.単純X線で左大腿骨頚部下方に骨硬化像,MRI検査で大腿骨頚部に骨折線を認めたため,左大腿骨頚部疲労骨折(compression type)と診断した.保存療法を行い,6ヶ月後に競技復帰を許可した.しかし,1ヶ月後,陸上部の合宿中に明らかな外傷なく右股関節痛が出現した.単純X線で右大腿骨頚部下方に骨硬化像を認め,MRI検査で右大腿骨頚部疲労骨折(compression type)と診断した.同様に保存療法とし8週後よりジョギングを許可した.大腿骨頚部疲労骨折は,その発見の遅れや管理によっては転位や偽関節など重大な結果を招くことがあり,早期診断と適切な治療が必要である.