2018 年 67 巻 1 号 p. 70-73
肩甲骨烏口突起骨折に鎖骨近位端骨折のみを合併した症例は我々の渉猟しえる限り過去に報告はなかった.稀な骨折の組み合わせにつき,治療経験を報告する.【症例】55歳女性.バイク走行中に右側に転倒.受傷時の肢位などについては覚えておらず不詳.右肩,胸鎖関節部に疼痛を認め上肢挙上困難であった.画像所見では右肩甲骨烏口突起骨折Ogawa分類Type1,鎖骨近位端骨折Robinson分類Type1A2を認め,受傷後6日に烏口突起の内固定を行った.鎖骨近位端は保存治療とした.受傷後2週よりリハビリを開始し,烏口突起骨折は経過良好で骨癒合も進んだが,鎖骨近位端骨折は受傷後2ヶ月のCTで骨萎縮,離開を認め超音波療法を開始した.受傷後4ヶ月では徐々に癒合傾向を認め,6ヶ月で骨癒合を認めた.本症例の受傷機序や治療につき考察する.