2018 年 67 巻 1 号 p. 82-85
【目的】極めて稀な母指中手骨骨端離開の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する.【症例】7歳男児,公園で兄と遊んでいて,前腕回内位で右母指背側を地面についた状態で兄に右母指を踏まれ受傷した.右母指痛,著明な腫脹が出現し当院を受診した.単純X線所見にてO’Brien分類typeCに掌側転位を伴う母指中手骨骨端離開と診断し,徒手整復後外固定での保存的加療を行った.外固定にて転位なく経過し,受傷32日後で外固定を除去した.受傷後6か月で骨端離開部の自家矯正を認め,可動域制限はなかった.【考察】小児の母指中手骨基部骨折のうちO’Brien分類typeCは極めて稀である.また,徒手整復後も再転位を生じて手術的加療が必要な例が多いとされるが,本症例では保存的治療が可能であった.今後も成長障害を来さないか経過観察を要する.【結論】極めて稀な小児母指中手骨骨端離開の1例を経験した.徒手整復が可能な例でも不安定とされる骨折型では注意深い経過観察が必要である.