2018 年 67 巻 3 号 p. 531-533
膝の外側側副靭帯周囲に石灰化を生じた1例を報告する.70歳女性.初診6日前より誘因なく徐々に左膝痛があり,初診4日前には激痛となった.初診時左膝の腫脹は軽度で大腿骨外顆付近に圧痛を認めた.単純X線では左大腿骨外顆の外側に3cm大の石灰化を認め,境界明瞭で腫瘍性疾患が疑われた.初診4日後の左膝単純MRIでは外側側副靭帯の外側(関節外)に石灰化を認め周囲の浮腫が著明であった.しかしMRI撮影日には疼痛が軽快し,3ヵ月後に単純X線で石灰化は消失.その後再発を認めていない.境界明瞭な石灰化であり,当初は腫瘍性疾患を疑ったが,一過性に消失したことや関節外に発生したことより石灰性腱炎が最も考えられた.本症例では病理組織検査が施行できていないため確定診断には至らないが,膝関節周辺に急性発症した石灰化を認めた際に,疼痛が速やかに消失する場合には石灰性腱炎も鑑別に挙げるべきと思われた.