2019 年 68 巻 2 号 p. 287-290
【目的】Tumoral calcinosis(以下TC)は,関節周囲の軟部組織に腫瘤状の石灰沈着をきたす疾患である.手,鎖骨,股関節近傍に生じたTCに対し,ビスホスホネート製剤を使用し著効した一例を経験したので報告する.【症例】68歳女性.4-5年前より,右手母指指腹部に小さな腫瘤を自覚した.半年前より示指,中指,左母~中指にも出現し,徐々に増大した.各種検査施行されたが膠原病は否定的であった.左手の腫瘤は自壊しそうであったため,当科紹介となり,外科的切除術を施行した.チョーク様乳白色の内容物を認め,病理組織検査にて,TCの診断に至った.術後,右鎖骨周囲,左股関節周囲に腫瘤性病変が新たに見つかった.骨粗鬆症も並存しており,ビスホスホネート製剤を開始した.現在,ビスホスホネート製剤開始後半年経過しているが,腫瘤は縮小し,再発を認めていない.【結論】症候性のTumoral calcinosisに対し,外科的摘出術およびビスホスホネート製剤を使用し著効した.