2019 年 68 巻 4 号 p. 627-630
(はじめに)比較的稀な寛骨臼脆弱性骨折を生じた症例を経験したので報告する.(症例)85歳,女性.3ヶ月前から誘因なく左股関節痛を自覚.1ヶ月前から跛行が出現したため,近医受診しX線で異常は指摘されなかったが,疼痛が強く骨盤周囲脆弱性骨折を疑われ,当院紹介受診となった.初診時,左股関節痛が著明で,立位・歩行困難であったため,安静入院とした.MRIにて左寛骨臼荷重面に浮腫性変化を認めた.また骨シンチにて同部位に異常集積を認めた.2ヶ月経過しても疼痛が軽減せず,またCTで骨折部の転位の進行を認めたため,人工股関節全置換術(THA)を施行した.(考察)近年高齢者の外傷性寛骨臼骨折に対して一期的THAを行う報告がみられるが,今回のような脆弱性骨折で関節内骨折の場合,かつ関節症性変化の進行が危惧される場合,THAが治療選択肢となりうる.