2023 年 72 巻 2 号 p. 271-274
症例:65歳女性.5年前から腰痛のため歩行が困難であった.2年前に近医を受診し,Hip Spine Syndromeと診断され,当院紹介された.単純レ線像ではcobb角33°(L1-L4),LL(lumbar lordosis)-15°の脊柱後側彎変形および左変形性股関節症を認めた.立位で骨盤は20°以上後傾し,キャスターでの歩行は100 mが限界であった.1年前に成人脊柱変形に対して第8胸椎~骨盤までの多椎間TLIFを併用した後方矯正固定術を行い,腰痛および左股関節痛が改善し,杖歩行が可能となった.しかし,徐々に左股関節痛が増強し,10カ月前に仰臥位前方アプローチ(DAA)にてDual mobility cupを用いた人工股関節置換術(THA)を行った.術翌日よりリハビリテーションを行い,術後3週で自宅退院した.現在,腰痛,左股関節痛なく,独歩可能で,脱臼は認めていない.考察:成人脊柱変形矯正後の変形性股関節症に対してDAAによる脱臼抵抗性のあるDual mobility cupを用いたTHAは有用であると思われた.