長崎県の大腿骨頸部骨折発生率が新潟, 鳥取, 沖縄県での調査結果より高くなった要因を検討する為に, 原爆被爆者のほぼ70%が居住する長崎市を対象として, 被爆が大腿骨頸部骨折発生頻度に影響があったかどうかについて1989年と1990年の2年間にわたり調査した.
長崎市では, 1989年に238例, 1990年には235例の発生があり, その中で被爆者は, それぞれ102例と113例であった. 人口10万人当りでは, 被爆者が280.1と307.4で, 非被爆者は316と285.6で有意差はなかった. 年齢階層別要素を組み入れた Mantel-Haenszen の生存率解析法でも, 被爆者と非被爆者間, そして近距離被爆者と遠距離被爆者間においても発生率に有意差がなかった.
以上の結果により, 被爆が大腿骨頸部骨折発生率に及ぼす影響はないと考えられた.