エビデンス (科学的根拠) に基づく医療の重要性がいわれて久しい. 医学・医療は人間を対象とする科学であり実践である. 科学的根拠のない医療を人間に応用するのは倫理的とはいえない. 臨床医学に科学性を求めるとすれば, 臨床疫学の応用が必須である. 臨床疫学とは, 医学における科学的観察とその解釈のための方法論の一つであり, 臨床医学で出てきた問題に対して疫学的原理と方法を適用するものといわれている. しかし, 人間を対象とする臨床医学では, 「科学性を高めようとすると倫理性を低くすることが多く, 倫理性を高めれば科学性を損なう傾向が出てくる」. この矛盾に目を向け熟慮すべきである.