2005 年 102 巻 8 号 p. 1004-1009
Clostridium difficileは,抗菌薬関連下痢症(AAD)の主要な原因菌の一つで,偽膜性腸炎の起因菌である.C. difficile関連下痢症の診断は,通常糞便中のC. difficileの検出によりなされ,C. difficileの検出には,現在C. difficileの産生するトキシンAやD1抗原を検出する迅速法が広く用いられている.今回われわれは,一般臨床病院におけるそれら迅速法と培養法によるC. difficile検出結果を比較検討した.対象は,当院にてAADと診断された148例の患者から採取された糞便232検体で,各検体につきトキシンA検出キット(ユニクイック),D1抗原検出キット(CDチェック)および培養法にてC. difficileの検出を行った.結果は,ユニクイック,CDチェック,培養法いずれかでC. difficile陽性となったものは,232例中100例(43.1%)で,各検査法による陽性率は,ユニクイック55例(23.7%),CDチェック56例(24.1%),培養法93例(40.1%)であった.培養法で陽性であった93例に基づいたユニクイック,CDチェックの感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率はそれぞれ,53%,96%,90%,75%および56%,99%,98%,78%であった.AAD患者においてC. difficile検出のために迅速診断法を用いる場合には,検査法の感度に十分留意し,その結果の解釈には注意が必要である.