日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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総説
UC関連性大腸癌の早期診断-サーベイランスの現況と展望―
平田 一郎
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2006 年 103 巻 9 号 p. 1023-1030

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抄録

UC関連性大腸癌の早期診断を目指して施行されているcolonoscopic surveillanceの現状,問題点,今後の展望について概説した.問題点としてあげられるのは頻回の内視鏡検査と膨大な生検数の割に癌発見率が低いこと,dysplasiaと非腫瘍性粘膜(炎症性粘膜)や散発性腺腫との鑑別の困難性,平坦粘膜に認められたLGDの取り扱いに対する見解の不一致,などがあげられる.大腸癌サーベイランスをより効率的なものにするためいくつかの試みがなされている.色素内視鏡と拡大内視鏡を用いたsurveillance colonoscopyは, 従来のrandom biopsyからtarget biopsyへと意識の変革を生み,生検個数の減少に繋がる可能性がある.また,従来の方法よりもdysplasiaの検出率を高め,加えて炎症性粘膜や散発性腺腫との識別率向上にも有用性を発揮するかもしれない.近い将来,サーベイランスを行うにあたりdysplasiaに代わる新しいサーベイランスマーカーとして分子生物的因子を解析することや,腸管洗浄液,糞便など大腸粘膜以外の試料をサーベイランスの検討対象とすることで,従来のサーベイランス方法に根本的改変がもたらされるかもしれない.

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© 2006 (一財) 日本消化器病学会
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