2007 年 104 巻 11 号 p. 1587-1593
機能性ディスペプシアの症状はpostprandial distress syndrome(PDS)とepigastric pain syndrome(EPS)の2種類で前者が80%を占める.PDSはさらに胃もたれ感と摂食早期の飽満感の2つのサブタイプに分かれる.胃もたれ感は胃排出能の低下,摂食早期の飽満感は胃貯留能とくに胃適応性弛緩不全が症状発現の機序と考えられる.一方,EPSは心窩部痛と心窩部灼熱感に分かれるが,両者とも胃酸依存性と考えられる.ただしいずれのタイプであっても内臓知覚過敏の存在が大きく,同じ強さの内圧や酸度を健常人より敏感に感じて症状出現に至る.内臓知覚過敏は抑うつ,不安など中枢性の異常と関連性が深いため,胃機能障害の改善のみでなく,脳-胃相関を見据えた中枢からのアプローチも治療手段として重要である.