2007 年 104 巻 3 号 p. 407-412
脾炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor)の1例を経験したので報告する.症例は59歳男性,CRP持続陽性精査のため,腹部CT施行.CT検査にて脾に単純で低吸収,造影にて脾実質より相対的に低吸収となる腫瘤性病変を認めた.MRI検査ではT1強調,T2強調ともに内部に一部高信号をともなう低信号の腫瘤像を呈した.血管造影でも悪性所見に乏しく,無症状であるが,CRP上昇の原因と考え,また,悪性リンパ腫の可能性が否定しきれず治療的診断的意義を兼ねて,脾臓摘出術を施行した.病理組織学的に脾炎症性偽腫瘍と診断した.脾炎症性偽腫瘍は極めてまれであり,悪性腫瘍との鑑別診断が困難である.確定診断は術後の病理組織診断によるため,脾臓摘出が治療的意義と同時に診断的意義を有し,予後も良好である.