2007 年 104 巻 8 号 p. 1236-1244
症例は75歳男性.突然の左側腹部痛にて近医泌尿器科受診.採血にて高アミラーゼ血症を,画像にて左水腎症をそれぞれ認め,急性膵炎の診断にて薬物療法と,左尿管閉塞に対し尿管ステント挿入術を施行後,原因精査目的に当院へ紹介された.USとEUSでは膵頭部と体尾部に多房性嚢胞を認めた.CTでは嚢胞性病変に加え,左後腹膜に横隔膜脚から左尿管,腸腰筋へ広範囲に連続した低吸収域を認め,同領域はMRIで一部高信号を呈した.ERCPやMRCPにて膵体部に限局した主膵管の不整狭窄を認めるもその原因となる病変は指摘されず,臨床経過から粘液栓またはアルコールによる急性膵炎後の内膵液瘻が左尿管閉塞を引きおこしたものと診断した.当院転院後は炎症所見もなく経過観察としたところ,尿管閉塞には変化を認めなかったものの,6カ月後にはCT上後腹膜の低吸収域は消失した.