2009 年 106 巻 10 号 p. 1428-1437
大腸癌化学療法について,肝転移を中心に概説した.全身化学療法は新規抗がん剤や分子標的薬剤の開発により長足の進歩をとげ,生存期間延長効果はもちろんのこと,局所効果でも極めて高い成績を示すようになってきた.今回大腸癌治療ガイドライン2009年版も公表され,大腸癌の標準的化学療法がほぼ定まりつつあり,今後も,分子標的薬剤を中心としたさらなる化学療法の治療成績の向上が期待されている.また,大腸癌肝転移症例に対するcommunity standardとして広く認知されてきた肝動注化学療法は,一次治療としてではなく,三次以降の治療や全身化学療法との併用療法,標準的化学療法が施行できない場合の治療法の位置づけとなりつつある.一方,新規薬剤の開発にあわせた新たな治療法の臨床への導入やそれにともなう新たな有害事象や複雑な治療手技の出現もみられる.今後は,これら標準治療を安全確実に施行できるための化学療法のレジメン管理や治療マニュアルなどの整備も重要になってくると考えられた.