2009 年 106 巻 8 号 p. 1147-1155
近年,遺伝子異常を背景とする慢性膵炎症例が少なからず存在することが明らかとなった.カチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子は遺伝性膵炎の原因遺伝子として同定され,膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)遺伝子変異は若年性の特発性慢性膵炎や家族性膵炎と関連する.遺伝的背景を有する慢性膵炎は若年より炎症を繰り返すことで,膵癌発症のハイリスクとなる可能性がある.実際,PRSS1遺伝子やSPINK1遺伝子に変異を有する慢性膵炎症例では,膵癌発症が高頻度にみられることが報告されている.遺伝子解析が成因解明のみならず経過観察や治療方針の決定に有用な情報を与えると期待される.