日本消化器病学会雑誌
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特別寄稿:第95回総会会長講演
わが国からの胃癌撲滅を目指して
浅香 正博
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2010 年 107 巻 3 号 p. 359-364

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抄録

JGSG研究の結果により,除菌により胃癌発生が約1/3に抑制されることが明らかになったが,同時に胃癌の発生を完璧に抑制できないことも明らかになった.そのため,一次予防としての除菌と二次予防としての内視鏡検査の組み合わせが胃癌による死亡をなくすために重要であると思われるが,その際,どのくらい費用がかかるのか算定を行った.その結果,ペプシノーゲン,H. pylori抗体測定によるスクリーニングとH. pylori除菌は,医療費を当初は押し上げるが,胃癌の治療費が激減するため大幅な医療費節減効果を発揮する.この方策により,5年間で約15万人の胃癌死を減少させることが可能となる.さらに胃癌死による逸失利益を加算するとこのプロジェクトの医療削減効果は絶大であると推定できる.このプロジェクトの遂行により胃癌は10年以内に現在の10~20%以下に減少する可能性が高いので,政府主導でできる限り早く開始することが強く望まれる.

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© 2010 (一財) 日本消化器病学会
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