2010 年 107 巻 4 号 p. 538-548
近年プロトンポンプ阻害薬(PPI)抵抗性非びらん性胃食道逆流症(NERD)の原因の1つとして,胃酸以外の液体逆流の関与が指摘されている.胃酸逆流(pH4未満)に加え,胃酸以外(pH4以上)の液体逆流や空気逆流を捉えるためには,食道pH・多チャンネルインピーダンスモニタリングによる評価が必要となる.PPI倍量投与にもかかわらず逆流症状が持続する患者に対し同検査を施行すると,約34~56%の患者の症状は液体逆流との関連が明らかとなり,その多くは胃酸以外の逆流によるものである.胃酸以外の液体逆流と症状の関連が明らかとなった場合には,逆流症状を改善・消失させるためには,逆流自体を抑制する必要があるが,現状では逆流自体を抑制する薬剤はなく,胃食道逆流症(GERD)診療ガイドラインで示されているように逆流防止術が治療の選択肢の1つとなる.