炎症性腸疾患の患者数が増加する一方で,さまざまな新しい治療法が導入されている.患者情報に基づき個々の患者に最適な治療法を提供する「個別化医療」が注目されているが,炎症性腸疾患治療の個別化はどこまで可能であろうか.長期にわたる免疫調節剤や生物学的製剤の投与にあたり,患者個人レベルで効果を予測し投与薬剤の種類,投与量を選択することで,治療効果の最大化と副作用の最小化が達成できたら理想的である.そのためには,患者情報を得るための鍵となるバイオマーカーの開発が急務となる.本稿では,日本人に特有のチオプリン代謝に関わる遺伝子多型の解析と抗インフリキシマブ抗体定量法を用いたクローン病の個別化治療の取り組みを紹介する.