糖質は細胞の主要なエネルギー源であるとともにヌクレオシドの構成成分である.また,インスリンは細胞分裂や増殖作用を有することから,糖代謝とがんは密接な関係にあると考えられる.事実,インスリン抵抗性を特徴とする糖代謝異常は,C型慢性肝疾患患者において高頻度に認められ,肝発がんの危険因子である.さらに,糖尿病は,近年急増している非B非C肝癌の危険因子でもある.このように,「糖代謝異常の制御」は,現在そして今後の肝がんの動向を左右する重要なテーマと考えられる.本稿では,臨床および基礎的視点から肝がんと糖代謝異常の関連につき概説する.また,肝がん抑制を目指した糖尿病治療の今後の展望についても論ずる.