肝細胞癌部と非癌部の脂質・糖代謝関連遺伝子の発現を比較検討すると,癌部では,解糖系が亢進しているが,TCA回路は抑制されており(Warburg効果),その代謝産物であるアセチルCoAを原料とする脂肪酸とコレステロールの合成は亢進していた.脂肪酸は酸化ではなく細胞膜成分(リン脂質)として利用されており,コレステロールは,増加した合成に反してLDLレセプターによる取り込みは減少していた.インスリンシグナル系は全般的に亢進しており,脂質合成や細胞増殖の増加に関与していると思われた.スタチンなどの代謝モジュレーターは肝癌の発生抑制や化学療法効果の増強に寄与する可能性が示唆された.