鉄はFenton反応により活性酸素種を産生し酸化ストレスを惹起する.そのため肝臓の鉄沈着は酸化ストレスを介した肝発癌促進因子とされている.臨床的にも肝内鉄過剰と肝発癌との関連性が指摘されている.典型例としては古くからヘモクロマトーシスと肝発癌の関係が知られているが,より日常的に遭遇する疾患としてC型肝炎,アルコール性肝障害,非アルコール性脂肪性肝炎においても鉄代謝異常が存在することが報告されている.鉄代謝異常の分子機構として鉄吸収のnegative regulatorであるhepcidinの関与なども明らかにされているが,いまだ不明の点も多く,また肝発癌に対するインパクトも今後の研究課題である.