2012 年 109 巻 5 号 p. 741-750
初発肝細胞癌(HCC)で当科入院となった74症例を調査し,本邦の肝癌診療ガイドラインの遵守状況と有用性を検討した.ガイドラインを遵守し経過観察されていたサーベイランス群23例,遵守していなかった非サーベイランス群18例,偶発的に診断されたインシデンタル群33例の3群に分類し検討を行ったところ,サーベイランス群ではインシデンタル群と比べて進行度,生命予後とも良好であったが,サーベイランス群と非サーベイランス群との間には差を認めなかった.肝癌診療ガイドラインは,早期診断,予後改善にある程度有用であったが,医師および患者のHCC高危険群に対する認識の強化,肝炎ウイルスキャリア以外の高危険群の設定が課題と考えられた.