抄録
アルコールは急性および慢性膵炎の主要な成因である.最近の2007年全国調査では急性膵炎の31.4%,慢性膵炎の64.8%がアルコール性とされる.アルコールによる膵炎発症機序としてアルコール毒性説,蛋白塞栓説など,さまざまな仮説が提唱されているがいまだ確立されていない.膵炎を発症するのは大酒家の一部にすぎない.このため,臨床的に膵炎が成立するためにはアルコールの作用のみならず,喫煙などの生活習慣や遺伝的背景が複合的に関与すると考えられる.アルコール性膵炎の再発や進行予防のため,断酒や禁煙といった生活指導の重要性が再認識されている.