2013 年 110 巻 12 号 p. 2042-2050
膵の癌化はK-ras遺伝子の変異によって始まり,p16やp53,Smad4などの癌抑制遺伝子の欠失や変異,さらにmicroRNAの異常発現が加わり,前癌病変のPanINを経て多段階的に発生する.遺伝子改変マウスを用いた実験からは,炎症が膵癌化を促進することも明らかにされている.膵癌の浸潤・転移には,癌と間質の相互作用や上皮間葉形質転換(EMT)といった現象が関与している.また,膵癌細胞の免疫機構からの逃避や抗がん剤耐性機構に,膵癌間質が重要な役割を果たしていることが示唆されている.