抄録
潰瘍性大腸炎(UC)の発癌早期病変(粘膜内腫瘍)には広い組織学的多様性がある.通常の高分化腺癌や腺腫と組織学的に同質のものに加え,通常の大腸腫瘍ではみることがまれな特殊型がある.SM以深浸潤癌では,(通常の大腸癌に比べ)低分化腺癌・印環細胞癌・粘液癌の頻度が高い.またこれらの組織型に加え,分化型腺癌でも浸潤性発育を呈することが特徴である.生検診断には,(1)dysplasia分類,(2)日本の通常の病理診断分類,(3)厚労省分類,が用いられている.組織学的多様性を示すUC発癌早期病変の生検診断には,(3)厚労省分類をもとに,細胞増殖動態とp53蛋白過剰発現の有無に着目した診断過程が有用である.