日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
総説
機能性ディスペプシア(FD)の現状と展望
春間 賢楠 裕明眞部 紀明
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2014 年 111 巻 6 号 p. 1049-1057

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抄録

機能性ディスペプシア(FD)は,症状の原因となる器質的疾患がなく,胃を中心とした上部消化器症状(いわゆるディスペプシア)を慢性的に訴える疾患である.FDに当たる病名として,日本では長く慢性胃炎が実地診療では用いられてきたが,ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ)の発見,さらに新たな胃運動機能改善薬の開発により,日本でも傷病名としてのFDが実地診療に浸透しつつある.しかしながら,欧米の診断基準では症状が限られ,さらに罹病期間の設定が長く,日本の実臨床には適しているとはいえない.FDの成因としては,胃十二指腸運動機能の異常,胃酸や脂肪に対する知覚過敏,ピロリ感染など胃および十二指腸粘膜の炎症,遺伝的素因,ストレス,消化管ホルモンの関与などがこれまでの検討で明らかにされているが,単一の病因で説明することはできないことが多い.日本の診療に適した診断基準の作成,個々の患者に応じた病態の解明により,治療の新たな展開が期待される.

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© 2014 (一財) 日本消化器病学会
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