2014 年 111 巻 8 号 p. 1543-1549
膵臓は異なる2種類の組織,すなわち内分泌組織と外分泌組織から構成されているが,発生上すべての細胞が共通の前駆細胞から分化する.膵臓の発生・分化は段階的に進み,最終的に膵臓ができあがるまで各段階で特徴的な形態を示すとともに転写因子の発現が緻密に制御されている.一般に最終分化を遂げた成体の細胞は,それ以上特性を変化させることがないと考えられてきたが,膵臓の細胞は変化しやすいことが知られ,内分泌細胞間での相互転換や,外分泌細胞から内分泌細胞への分化転換の証拠も見つかっている.膵臓,特に内分泌細胞の分化・再生の仕組みを理解することは,糖尿病の治療へも応用できる可能性を秘めている.