日本消化器病学会雑誌
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総説
急性肝不全―概念,診断基準とわが国における実態―
持田 智
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2015 年 112 巻 5 号 p. 813-821

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抄録

急性肝不全は「正常肝に肝障害が生じ,その機能が短期間に著しく低下して,肝不全症候を呈する」疾患群である.その成因として肝炎ウイルス感染が多いわが国では劇症肝炎が代表疾患であり,薬物性中毒症例が主体である欧米のfulminant hepatic failureとは疾患概念が異なる.しかし,米国では2005年に疾患名がacute liver failureに統一され,わが国でも整合性を考慮して,2011年に厚生労働省研究班が急性肝不全の診断基準を発表した.わが国における急性肝不全の実態は,同研究班が全国調査を実施しており,肝炎症例が主体であるが,ウイルス性症例が減少傾向にあり,成因不明例が増加していることが明らかになった.その予後は不良であり,人工肝補助療法で覚醒は得られても,肝再生不全によって肝機能の改善が得られず,肝移植以外では救命できない症例が多い.

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© 2015 (一財) 日本消化器病学会
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