2015 年 112 巻 9 号 p. 1641-1650
アルコール性肝障害(ALD)は脂肪肝からアルコール性肝炎,もしくは肝線維症を経て肝硬変,肝癌への進展様式をとる.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,脂肪肝とアルコール性肝炎に類似の組織像を呈する脂肪性肝炎(NASH)を含む.ALDとNAFLDは病因論的に対極に位置するとの認識のもと,NASH発症に関わる成因の探索が行われた.しかし,多くの因子群が複合的に連関し,複雑なクロストークを形成して肝障害惹起に関わるという点でALDとNAFLDには共通点があることが明らかにされた.共通する病態基盤の考察,そこから生まれる差異への洞察が,それぞれの病態と発症機序を理解するうえで重要である.