日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
特別寄稿―第101回総会会長講演―
早期慢性膵炎の確立にむけて
下瀬川 徹
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2016 年 113 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

慢性膵炎とは,非可逆性かつ進行性の膵の慢性炎症であり,膵実質の脱落と線維化を特徴とし,進行すると実質荒廃による膵内外分泌不全をもたらす疾患と定義されてきた.この定義に基づいた診断基準が長い間用いられ,その結果,進行した慢性膵炎を診断することに主眼が置かれてきた.慢性膵炎患者の平均寿命は短く,膵癌罹患率が高い実態が明らかにされており,早期診断と早期介入による病態の進行阻止が望まれる.遺伝性膵炎の原因遺伝子の同定,特発性膵炎の遺伝的背景の解明や膵星細胞の発見と機能の理解は,早期診断とともに,新しい治療法の可能性を示している.2009年に本邦から早期慢性膵炎の診断基準が提唱され,診断基準に基づいた早期患者群の病態や予後について実態が明らかとなりつつある.

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© 2016 (一財) 日本消化器病学会
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