2016 年 113 巻 10 号 p. 1682-1691
機能性消化管障害の1つである機能性ディスペプシア(functional dyspepsia;FD)は,現在Rome IV基準によって定義され,つらいと感じる食後のもたれ感や心窩部灼熱感といった慢性の上腹部症状があるにもかかわらず器質的疾患を認めない症候群である.その病態の1つとして胃酸の関与が指摘されており,非びらん性胃食道逆流症やFDにおける酸に対する知覚過敏がディスペプシア症状発現の原因となっていると考えられている.機能性消化管障害の病態は複雑で,胃酸分泌抑制薬の効果は限定的であるが,胃酸が関わっている病態に対して効率的に酸分泌抑制薬による治療を行っていくことが重要である.