2017 年 114 巻 9 号 p. 1621-1628
2009年に分子標的薬ソラフェニブが登場して以来,肝細胞癌に対する化学療法は大きく変化した.遠隔転移,脈管浸潤に対する治療選択肢が増え,進行状態でもある程度長期生存が得られるようになったが,縮小効果が乏しいことや毒性などから,ソラフェニブにかわる新規分子標的薬の開発が進められている.しかしながら他のがん種にはない肝細胞癌特有の事情により開発は困難を極めている.そのような状況の中,最近,相次いで2つの分子標的薬の有効性が証明された.一方,近年注目を浴びている薬剤が抗PD-1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害剤である.ユニークな作用機序により癌細胞を排除するこの薬剤は,現在,Phase IIIまで進んでいる薬剤もあり,その治療効果が期待されている.ただ,他がん種においてはその高額な薬剤費が社会問題になっており,適切なバイオマーカーの設定の必要性が高まっている.