2018 年 115 巻 10 号 p. 862-867
NBI(narrow band imaging)の出現は,頭頸部における表在性扁平上皮癌の発見と発生および嚥下という重要な生理機能を温存することを可能にする大きな治療革新をおこした.縮小切除が施行された患者の経過が明らかになっていくにつれて,頭頸部表在癌に対して解決すべき課題が突きつけられるようになった.その1つは,リンパ節郭清といった追加治療の可否を病理組織像から予測可能か否かである.頭頸部では,粘膜筋板がないために壁深達度の概念はT因子に含まれておらず,広い上皮下層を細分類してリンパ節転移に関するリスクを食道表在癌のように層別に段階的に提示することができない.本稿では食道表在癌と頭頸部表在癌を対比しつつ,今後の課題を解説する.