2018 年 115 巻 2 号 p. 129-136
十二指腸では,胃酸,胆汁,膵液,各種消化酵素などが互いに影響し合いながらバランスを保っている.しかし近年,H. pylori感染率の低下および除菌治療の普及により胃酸分泌能に大きな変化が生じ,このバランスが崩れている可能性がある.実際に十二指腸潰瘍の減少,十二指腸癌・腺腫の増加,さらには十二指腸異所性胃粘膜の増加ならびに形態学的な変化が認められる.十二指腸の環境を考慮した病態解明とともに,内視鏡観察方法を含め内視鏡診断学,さらには治療法の確立が急務と思われる.