2018 年 115 巻 5 号 p. 449-459
現在,欧米での強毒変異株の出現によって難治性の再発性クロストリジウム・ディフィシル感染症(rCDI)が猛威をふるっている.2013年,オランダのグループがrCDIを対象とした糞便微生物移植(FMT)の臨床試験で画期的有効性を証明し,FMTは急速に注目を集めている.rCDI以外には炎症性腸疾患,過敏性腸症候群をはじめとしたさまざまな消化管疾患,さらには消化管外の疾患においてもFMTは試みられている.本稿では,rCDIにおけるFMTの成功からちょうど5年が経とうとしている2017年時点の今,FMTの歴史,現状を振り返って解説し,FMTの将来像について議論してみたい.