2019 年 116 巻 12 号 p. 971-978
難治癌である膵癌の前浸潤癌病変あるいはリスク病変として位置づけられる2つの囊胞性病変,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)および膵粘液性囊胞腫瘍(MCN)に関する病理診断にあたって,議論となりやすい事項を述べた.IPMNの病態は極めて多彩であり,術前・術後診断において,症例毎にどのような外科病理や組織・細胞診が求められているかを把握する必要がある.必要に応じてKRAS変異などの分子病理学的な検索を行うことは有意義である.MCNにおいても,分枝膵管型IPMN同様,経過観察可能な病態の解析が期待される.現在でもなお,切り出し時のマクロ所見の検索が,IPMNやMCNの病態の理解に重要である.