非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は,消化性潰瘍の主因である.Helicobacter pyloriの感染率が減少する中で,超高齢化社会にともない薬剤起因性潰瘍の比率が年々増加している.NSAIDsにより消化性潰瘍や消化管出血の危険性は増加するため,特に潰瘍の有病者はNSAIDsの単独投与は禁忌であるが,臨床の現場では潰瘍を発症しても原因薬剤を中止できない場合は多い.近年,消化管粘膜傷害を引きおこす薬剤が多数報告され,その粘膜傷害の予防にはH. pyloriの除菌治療とともに,酸分泌抑制を適切に行うことが必要と考えられており,個々に応じた治療戦略の立案が重要となる.