2025 年 122 巻 5 号 p. 323-334
MASLD肝癌では,脂肪毒性や酸化ストレスを介した肝細胞死を起点として慢性炎症から線維化,発癌に至る古典的経路と,酸化ストレスなどによる直接的な癌化促進の,2つの経路が想定されている.また,炎症発癌の過程におけるMASLDの特徴として,持続的なmetabolic stressによる選択圧が,生存に適した代謝変化をともなう肝細胞のクローン選択を促し,その結果として発癌に至る可能性が示唆されている.さらに,免疫微小環境の変化や多臓器連関も発癌に関与しており,MASLD肝癌は多因子が複雑に絡み合う病態である.本稿では,最近の代表的なエビデンスを紹介しつつ,MASLDからの発癌機序について概説する.