消化器病学
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癌「エキス」注射ニ依ル癌患者ノ「ビタミン」Kノ消長
二木 謙一
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1944 年 9 巻 3 号 p. 277-328

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抄録

恩師岡田教授ハ長年ニ瓦ル研究ノ結果動物ノ移植癌ニ同教授ノ創製セル癌「エキス」ヲ反復注射シ其ノ治癒ヲ見タル事ニ依リ近時更ニ本「エキス」ヲBashford型二十日鼠癌ヨリ多量作成シ人癌ニ應用サレ良好ナル結果ヲ収メツヽアリ.本研究ニ附髄シテ余ハ本癌「エキス」注射ニ依ル癌患者ノ「ビタミン」Kノ消長ヲ觀察セリ.即チ本「エキス」ガ各腫癌ニ對シテ如何ニ作用スルカ, 又肝臓機能カ如何ナル程度ノ障凝ヲ受クルカ, 或ハ本「エキス」注射中出血ノ危険ナキヤ等云フ事ニ關シ「ビタミン」K方面ヨリ各種癌患者24例 (胃癌16例, 肺臓癌3例, 食道癌2例, 肝臓癌・直腸癌・子宮癌各1例) ニ就キ現今最モ汎ク行ハレツ, アルQuickノ「ビタミン」K測定法ノ改良法ヲ用ヒ經過ヲ追ツテ觀察セリ.
先ヅ「ビタミン」K測定ニ當ツテハ現今非常ニ多クノ方法アルモQuickノ方法ノ最モ便利ナル事ヲ詳述シ本法ニ依リテ「ビタミン」K量ヲ求ムルニハ血漿「プロトロンビン」量ヲ測定シ間接的ニ知ル事ヲ説明セリ.
次ニ本法ヲ用ヒ健康者25名ノ「プロトロンビン」凝固時間ヲ求メタルニ最短15.1秒, 最長20.6秒, 平均16.6秒ナル値ヲ得タリ.
次ニ本平均値ヲ有スル1健康人ヲ選ビ其ノ血漿ノ各濃度ニ於ケル「プロトロンビン」時間ヲ測定シQuickニ從ヒ標準曲線ヲ作成セリ.本血漿ノ濃度ヲ100%トシ未知血漿ノ濃度ハ本曲線ニ依り此ノ標準血漿ニ對スル百分率トシテ知リ得タリ.
本法ニ依リテ健康人25名ヲ測定セルニ100%以上ヨリ72%迄ナリ.
次ニ胃癌29例, 食道癌6例, 肝臓癌8例, 肺臓癌3例, 直腸癌2例, 子宮癌・膵臓癌各1例計50例ノ總平均値ハ67%ニシテ健康値ヨリ稍低キ事ヲ知レリ.尚肝臓癌8例ノ平均ハ44%ニシテ特ニ低キ事ハ肝臓機能ガ本「ビタミン」ニ大ナル影響ヲ及ボスモノト思考サル.
次ニ健康人3例, 癌患者3例ニ就キテ50日間10日ヲ隔テテ「ヅロトロンビン」値ヲ測定シ其ノ經過ヲ觀聚セル所, 健康人ニ於テハ10%ヨリ13%ノ變動ヲ, 癌患者ニ於テハ11%ヨリ17%ノ減少ヲ示セリ.何レニシテモ20%ヲ超ユル事ナク又健康者ニシテ病的閾迄ノ下降モ認メラレザリキ.
最後ニ24例ノ各種癌患者ニ隔日癌「エキス」ヲ注射シ10日目毎ニ「プロトロンビン」値ヲ測定シ其ノ變動ヲ觀察セル結果次ノ事ヲ知レリ.
(1) 癌「エキス」注射ニヨリ癌患者ノ「プロトロンビン」値, 注射終了後注射開始前ヨリ上昇セシモノ13例, 減少セシモノ11例ニシテー般ニ癌「エキス」注射ニ依リ増加ノ傾向ヲ認メタリ.
(2) 癌「エキス」注射ニヨリ最初ノ間ハ「プロトロンビン」値減少スルモ之ハ一時的ニシテ更ニ注射囘數ヲ重ヌルニ從ヒ, カ, ル減少ハ消失ス.從ツテ本「エキス」ハ肝臓機能ニ恒久的ノ障礙ヲ與ヘザルモノト思考ス.
(3) 癌「エキス」注射ニ依リ「プロトロンビン」ガ出血臨界値以下ニ減少セシ事ハ認メラレザリキ.
(4) 癌「エキス」注射期間中ニ殆ド全例ニ於テ「プロトロンビン」値20%ヨリ60%迄ノ變動ヲ見タリ.注射セザルモノノ20%以下ニ比シテ遙カニ大ナリ, 之レ癌「エキス」ノ作用ニ依ルモノト信ズ.
(5) 全患者ヲ「プロトロンビン」値ノ變動形式ニ依リ4群ニ分チ概ネ其ノ豫後ヲ判定シ得タリ.
(6) 血液所見 (主トシテ赤血球・血色素) ハ「プロトロンゼン」値ノ増減ト併行關係ヲ示スモノ多シ.

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