1971 年 68 巻 10 号 p. 1080-1088
われわれは従来の胃内視鏡検査ではとらえ難い微細な胃粘膜の変化を把握するために拡大観察用のフアイバースコープ (FGS-ML) を用いて検討を行なつてきた. その基礎的研究として実体顕微鏡および走査電顕で微細所見の観察を試みているが, 今回, 人の胃を用いて線状潰瘍瘢痕を走査電顕で観察した. その結果, 胃小窩は梯子状のものとドーナツ状を呈するものに大別できた. 特に線状潰瘍瘢痕で再生した上皮で被われた部分のうち, 噴門側に梯子状のもの, 幽門側にドーナツ状の胃小窩が認められた. 3,000倍拡大走査電顕像には胃上皮細胞表面が観察されたが, 薄い粘液膜が被つており, microvilli と思われる多くの顆粒状の突起を認めた. しかし, 本症例が胃潰瘍切除例であり, 表層性胃炎が強く, 粘液が充分除去されておらず, したがつてこのような場合の粘液除去法が今後の問題と考える.