1972 年 69 巻 12 号 p. 1265-1280
十二指腸乳頭炎について, 剖検例における膵, 胆道系の末端部縁を参考にしつつ, 主として十二指腸粘膜面の検討によりそのアプローチを試みた.胆道系疾患の乳頭部は正常人の約2.5倍と腫大し, 形態的に縦ひだの強調されたDないしD'型をとる.また, 同部の生検組織像の検討, さらには総胆管最大径との関係から本症の乳頭部に程度の差こそあれ炎症性狭窄が存在していると考えたい.胆道結石を有しない一次的乳頭炎と考えられるもの, また, 胆摘後症候群症例において, 内科的治療により症状が好転するものがあり, その意義を強調したい.さらに, 乳頭炎の消長が周辺臓器疾患の運命を左右し得る可能性を示唆した症例を経験した.