1973 年 70 巻 10 号 p. 1046-1053
幽門保存胃切除術において幽門輪より約1.5cmの巾で残存した幽門洞粘膜の胃相における胃液分泌への影響を実験的に検討した. すなわち, イヌに Heidenhain 胃嚢を作成し幽門洞粘膜を食餌にて刺激した場合と幽門洞粘膜を薬物にて潅流刺激した場合について, 慢性および急性実験を行なつた. 幽門保存胃切除術においては胃相による胃液分泌は著明に減少し減酸効果の上では満足すべきものであつた. しかし, 胃内容の停滞をきたした場合には残存した幽門洞粘膜は胃相による胃液分泌刺激源としてなお十分に作用することが示唆された.