1973 年 70 巻 3 号 p. 175-188
過去16年間に亘つて50例の無鉤条症症例について, 臨床的立場から, 感染者に関する一般的事項, 臨床所見, 臨床検査成績, 小腸レ線像, 宿主と無鉤条虫の生物学的関係を中心に研究した. 感染者は昭和35年から5年間に最も多く認められ, 現在でも散発的に認められる. 虫体節排出をのぞく自覚症状は, 無自覚なもの48%, 他は消化器症状が主なもので, 腹痛16%, 肛門部不快感, 掻痒感10%などが認められた. レ線的には小腸運動昂進所見が認められ条虫症の臍部を中心とする鈍痛の原因と考えられた. 末梢血液好酸球数は従来の記載と異なり, 条虫感染後4カ月以内の症例に増加を認めた. 無鉤条虫の頭部の位置は従来, 不明であつたが, 24例中6例に頭部をレ線的に証明し, その主な位置は十二指腸空腸曲より3乃至5cm肛門側にあることを明らかにした.