1973 年 70 巻 3 号 p. 189-195
中国地方では, 従来, 広節裂頭条虫症の報告がみられなかつたが, 昭和35年に岡山県吉井川流域で感染した2症例を認め, 以来, 昭和46年までに14症例を経験した. これらの症例について疫学的並びに臨床的立場から, 感染者に関する一般的事項, 臨床所見, 臨床検査成績, 宿主と広節裂頭条虫の生物学的関係について研究した. 感染者14例のうち9例は中国地方での感染の明らかなものであつた. 虫体排出をのぞく自覚症状は, 便通異常などの軽度の消化器症状のほかは稀であつた.
末梢血液像については1例, 軽度の高色素性貧血を認めたのみであつた. 条虫寄生による好酸球増多は認められなかつた. 感染者の検討から, 広節裂頭条虫は感染後, 20日ですでに多数の卵を産出するものと考えられた.