1974 年 71 巻 1 号 p. 81-85
種々の型の慢性肝障害について, オーストラリア (Au) 抗原の出現状況を調べ臨床的諸事項と対比検討した.Au抗原は慢性肝炎, 肝硬変症例の約1/3に, 肝癌症例の1/2に陽性であつたが, 他の慢性肝障害では陰性であつた.Au抗原陽性の慢性肝疾患群では陰性のそれに比較すると, 家族に肝疾患をもつもの, 肝疾患の既往歴をもつものが多かつたが, 輸血歴, 手術歴では差がみられなかつた.酒客で慢性肝障害を有するものの中14%にAu抗原が陽性であつた.肝機能検査では, RAテストが90%陽性で有意に高く, その他の検査では差がなかつた.Banti症候群6例中4例にAu抗原が陽性で, その中1例はCruveilhier-Baumgarten症候群とみなされるものであつた.