異なる6家系に属する家族性大腸ポリープ症例15例の胃について信頼しうる情報を入手することが出来た.その内訳は, レントゲン, 内視鏡による臨床的検査所見11例, 切除胃2例, 剖席材料2例である.
この中10例66.7%に隆起性病変を発見した.この数値は本症に関する全国調査の結果 (10%) よりいちじるしく高い.われわれの収集した胃ポリープ陽性例は, 6家系のすべてに分布しているから, われわれが特種な家系のみを検査の対象としたとは考えられないので, 従来は胃に関する検査が不充分でこれらが見落されたのであり, 胃ポリープは本症の本質の一部であると考える.
本症の胃ポリープは, 組織学的には中村III型ポリープ, ATP, II a subtypeのなどとよばれているものに属するもの, すなわち真性の腫瘍であるが, 多発することが特徴的である.
以上の事実は, 本症が大腸の限局性の疾患ではなく, 全身性疾患であることを示すものと考える.