1974 年 71 巻 8 号 p. 755-763
ヒトに抗生物質を経口投与すると, 胆汁中のdeoxycholateとchenodeoxycholateの比 (DC/CDC比) が低下すると共に, glycine抱合とtaurine抱合の比 (G/T比) が低下し, 個体差が小さくなるのが認められた. この変化は難吸収性の抗生物質でも起ることから, 腸内細菌叢の変動が胆汁酸の抱合比に影響を与えることが示唆される. ラット, ハムスターでも同様の変化がみられたが, ハムスターに注射投与した場合, DC/CDC比が低下しないに拘らず, G/T比の低下を示した. 即ち, 肝の抱合系に対する抗生物質の直接の影響も否定できない. また, ヒトにおいてursodeoxycholateの増加する例がみられたので, 抗生物質の胆汁酸代謝経路に対する影響も考慮せねばならない.