1974 年 71 巻 8 号 p. 808-817
脂肪肝25例の臨床的特徴を総括して, 脂肪肝の成因, 診断に関して検討を試みると同時に, 4例に生検肝組織所見の推移を観察して治療の面にも若干の検討を加えた. 線維化を伴わない脂肪肝では肥満が共通にみられ, 血液生化学検査では諸家の報告に一致して, ある程度慢性肝炎との鑑別に役立つ特徴が認められた. 糖負荷後の血糖, 血清IRI, 血清FFAおよびその脂酸構成の推移の検討では脂肪肝自体に特異的な所見はみられなかつた. インシユリン分泌能は個人差が著しいことは脂肪肝の症因が単一では無いことを示唆していると考えられる. 肥満および大酒歴を有する例ではおのおの体重減少, 禁酒により組織学的にも肝脂肪滴の減少, 消失を認めた.