日本消化器病学会雑誌
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実験的胃潰瘍の再生に関する3H-thymidine autoradiograph 的研究
吉羽 宣男須藤 宏
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1975 年 72 巻 4 号 p. 339-354

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抄録

胃粘膜が障害された場合, どのような反応を生じるかを細胞増殖の面から検索した. ラット胃粘膜に欠損 (びらんおよび潰瘍) を手術的に作成し, その治癒過程を3H-thymidine antoradiograph および連続切片で組織学的に検索した. I. ラットの胃底腺領域に粘膜の表面側半層が欠損したびらんを作成した. 2日後にびらん部に標識腺細胞が出現し, 成熟腺細胞が増殖細胞化することを示した. 5日後に幽門腺様組織を形成し, 10日後に腺窩上皮が出現した. II. ラット胃に粘膜欠損を手術的に作成した. 潰瘍辺縁の未分化細胞が多数標識されるのみでなく, 2日後では潰瘍辺縁の腺底部に標識腺細胞が独立的に出現した. すなわち, 辺縁の成熟腺細胞も増殖細胞化することを示した. この腺細胞から新生腺管が形成され (3日以後), ついで潰瘍底へ侵入した. III. ラット胃潰瘍を連続切片で観察し, 再生粘膜を立体的に検索した. その結果, 胃粘膜の再生は, 潰瘍辺縁に既存する未分化細胞が増殖するのみでなく, 辺縁の腺底部から再生腺組織が形成された.
従来, 一般的に, 胃粘膜の再生は腺頚部付近にある未分化細胞 (幹細胞) のみが行うと考えられてきたが, 本研究により, 腺底部の成熟腺細胞も増殖細胞化し, 再生に関与することが明らかとなつた.

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